急展開
なぜか英文学の研究書によく登場するので、シェイクスピア専門でなく とも読んでおこうと思い、購入。 話の筋は、『テンペスト』にも通ずるような、悲劇・苦痛→和解・幸福 といった流れだ。王妃が、ボヘミア王と浮気してるんじゃないかと突然 疑い始めたシチリア王は、周りの者が何と言っても聞かず、王妃を裁き、 産まれた王女を追放させようとする。王子の死を聞いた王妃は倒れて 死に、新生児の王女はボヘミアに捨てられ、そして、16年が過ぎる。 王女は羊飼いの家で美しく成長し、ボヘミア王の王子と恋仲になった ことから、事態が動きはじめる・・・ シェイクスピア劇としてはそこそこの厚さがあるにもかかわらず、展開 がところどころ異様に早い。シチリア王は随分と嫉妬に苦しめられて いたわりに、あっという間に悔い改めてしまう。王女の身元が判明する 場面も、噂話で片付けられてしまっていて、感動の再会・和解の場面が ない。読者にちょっと気を持たせておいたと思ったら、一瞬にして話を すすめてしまう、といった感じがある。 また、そもそもシチリア王が妻の不貞を疑うこと自体、かなり唐突で あり、不自然ともいえる。 話は一応ハッピーエンドだが、あっけなく死んでしまったキャラも複数 いる点で、とにかくハッピーな喜劇とは異なる。 とはいえ、人を騙してまわるごろつきが意外な役割を果たすなど、読者 の興味をひきつける点も随所にみられ、読みやすい物語である。
時の翼
悲劇時代を終えたシェイクスピアの最晩年に書かれた諸作品は「ロマンス劇」と呼ばれている。これらに共通しているのは、様々な事情で生じた誤解や離散が、長い年月を経て再会と和解に導かれる、ということ。「冬物語」の場合、2幕で生まれ捨てられた赤ん坊が、16年後の終幕でめでたく結婚に至る。時にはすべてを解決する力がある! −−でも、こんな月並みなことを、シェイクスピアともあろう者が本当に信じていたのだろうか? 悲劇時代にあれほどまで人間の悪を描き出してしまった男が?歴史上、賢者といわれる人は少なからずいたのに、私たちはなぜか彼らが肝心の秘密を語ってくれなかったような印象を持っている。でも、そうではないのかもしれない。彼らが本当に言いたかったことは、余りにもありき!!たりで、私たちがそのそばを通ってもすぐにそれとは気づかないような素朴な風貌をしているので、私たちのほうでそれを見過ごしてしまっているだけなのかもしれない。たとえばイエスは言っている。「神の国はあなたたちの間にある」(ルカ17・21)。 16年という年月は、長いのか、短いのか? シェイクスピアが本当に、時がすべてを解決する、と信じていたかどうかはわからない。でも、彼は確かにそう、信じたい、と思っていたように、私には見える。
白水社
シンベリン シェイクスピア全集 〔34〕 白水Uブックス から騒ぎ シェイクスピア全集 〔17〕 白水Uブックス 尺には尺を シェイクスピア全集 〔26〕 白水Uブックス テンペスト シェイクスピア全集 〔36〕 白水Uブックス 終わりよければすべてよし シェイクスピア全集 〔25〕 白水Uブックス
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